羊のうた
(The Lament of a Lamb)
監督:花堂純次
出演:小栗旬/加藤夏希/美波
2001年/日本/109分/☆☆☆☆
批評 古典演出の妙技
吸血衝動が発生する、血族病を抱えた姉弟の物語。
極端な話をすると、吸血鬼日本版。ただ、話のスポットが違う。
物語的な上手さよりも、ビジュアル的な上手さが目立つ。
夏の日差し、寺の境内、河の流れ、木々の緑、そしてなによりも日本家屋の陰影。
そういたもののビジュアル化という意味では、近年まれに見る出来の良さ。「冷静と情熱のあいだ」で大失敗だった照明が、ここでは大成功していると言うのもその理由だろし、日本映画演出の王道 (とは言え、今やこれを使える人は少ない) たる、左右対称の画の使い方も実に上
どういう画かを手っ取り早く説明すると、これでカメラが横に動けば市川昆、カメラが50cm 下がれば小津安二郎。そういう画だ。
ただ、そうしたビジュアル的な完成度の高さに物語りは追いついていない。
明らかに説明不足に陥っている部分はあるし、物語も途中をふっ飛ばしすぎている部分もある。周辺人物の説明にあきらかなムラもある。
とは言え、映画の物語に関して重要な動きをする四人の人物に関してはしっかりできている。問題なのは、他の人間の扱いを中途半端にしてしまったことなのだろう。
物語の大筋に関して、些末的な説明を排したことは高く評価するがな。
現在もなお続いているコミックを原作としているため、ある程度の綻びは仕方ないのかもしれないが、映画単体で見た場合「あの台詞はいったいどこにつながるの?」とか、「あの演出はどこと対になっているの?」という部分が多すぎて気になる。
映画の中で対や、解答を作れないような複線は切ってしまったほうが良かったのではないだろうか?