冷静と情熱のあいだ
(Twixt Calm & Passion)
監督：中江功
出演：竹野内豊／ケリー・チャン
2001年／日本／125分／☆☆☆
批評 古典演出の妙技
特徴的に気になったのは二個所。
一つは、ナレーションの多さ。
映画は本来、心理描写を不得意としている。小説は逆に、心理描写を特異としている。
その差を埋めるべくなのか、それとも脚本家がそれ以外の方法を編み出せなかったのか、はたまた演出がビジュアル的に説明することを放棄したのか分からないが、あまりにも主人公によるナレーションが多い。多すぎる。
これだけ多いと、ビジュアル付きラジオドラマなのではないかと思うほどだ。
二つ目は照明のバラツキ。
一部、色が飛ぶほど明るいシーンがあったかと思うと、暗すぎるシーンがあったり、明暗の強調を意識したと思われるシーンも、その差がはげしすぎて今一つ効果的ではない。
解くに酷いと思ったのは、冒頭の美術品修復工房の内部と、主人公が東京に戻って、思い出の地である大学を訪れるシーン。両方とも前後に比べて極端に暗すぎる。
キャメラワークは、TV 出身とは思えぬほど引き画が多く、好感が持てる。
フィレンツェの街並みを、十分にフィルムに押さえることに成功していると言えるのではないだろうか？
ただし、キャメラが全然動かないのは TV 的で減点。連動して、人の動きが、フレームの左右で表現されすぎるのも画的な面白味にかける。
物語の完成度は決して低くないし、役者もそれなりに頑張っている。
けど、それだからこそビジュアル的な些末的な欠陥が目立つ仕上がりであった。