レディ・ジョーカー
監督:平山秀幸
出演:渡哲也/徳重聡/長塚京三
2004年/日/121分/☆☆☆
批評 DVD で良いから 4時間の「アルティメット版」を望む
映画の脚本は、その長さに反して薄いことが多い。
これは、映像による説明の面倒臭さをあらわしている。文章なら一行で済むような部分も、映像だと数秒間かけて撮影せねばならないからだ。
結果、小説を原作に持つ映画は、その小説をどう短くするかが勝負になる。
この作業、ミステリーだと難易度が各段に上昇する。
ミステリー小説は、その性質上、全体の構造が複雑だからだ。
ヘタに切ると、作品そのものが崩壊してしまうし、切らないと時間がいくらあっても足りなくなるからだ。
この映画は、この時間の壁の中で、可能な限り原作の要素を詰め込むという選択をし、失敗したのだ。
才能も実力も有るスタッフとキャストをあつめ、時間を、金をかけて撮影している。作り手の"本気"が画面から伝わってくる作品だ。
だが、上映時間を2時間におさめねばならないという壁はどうしようもなかった。犯人グループの説明はもちろん、警察内部のいざこざに至るまで、すべてをいれてすべてが中途半端になってしまった。
この、ほとんどただ一点の、しかして致命的な一撃によって、この映画は崩壊している。
やはり、なんだかんだ言っても「映画は脚本である」事を実感させてくれる一本であった。