フラガール
監督:西川美和
出演:オダギリジョー/香川照之/伊武雅刀
2006年/日/119分/☆☆☆☆☆
批評 つまらない映画ではない、が
福島県いわき市にある、常磐ハワイアンセンター (現・スパリーゾートハワイアンズ) 設立時、その目玉は温泉を駆使した大規模なプールと、地元の女性によるフラだった。
そのフラを踊る彼女たちにかくされた、友情と激闘の感動映画っ!!!
とまぁ、無駄に力が入り、観客に向かって臆面も無く「さぁ泣け!!」という分かりやすい演出が前回の、ある意味、非常にわかりやすい映画。
とは言え、露骨に周防正行「Shall We ダンス?」の影響を受けているのを差っぴいても、仕上がりは疑問が残るものとなっている。
基本的に、熱血スポ根に ProjectX 的感動物をかけあわせた内容であるにもかかわらず、炭鉱の話、ヒロインと母親の確執、ヒロインの兄とフラの先生、炭鉱夫と常磐ハワイアンセンター推進派の確執、ヒロインとその友人の物語と、やたらめったら詰め込みすぎていて主軸がはっ
結果、個々の話が連動せず、バラバラに進行し、そのまま終わる。
当然、上手くまとまらないままうやむやに終わっている話もやたらと多い。
もっと要素を殺ぎ落として直球ど真ん中の話にすれば、あと一段は面白くなっただろうに。
この、脚本、というか物語の組み立てのまずさは、よりによって最後の、常磐ハワイアンセンター初日の、フラの舞台で思いっきり発露してしまう。
事実上一人のダンスなわけだが、内容が同じダンスが、最後を含めて計三回出てくる。
最初は、先生が踊っている。
これを見て、フラガール最初の四人に意識改革が発生する
二回目は、ヒロインが踊っている。
これを見て、ヒロインの母親に意識改革が発生する
最後は純粋な見せ場として存在している。
まず、一回目。これは良い。
けど、一回目と二回目は、同じ意識改革であり、その前にヒロインと母親の徹底した衝突を描いているわけだから、同じカメラアングルで、同じカット割で見せたほうが(最後だけ変えておく必要があるが)、より効果的だったと思う。
にもかかわらず、見せ方がぜんぜん違う。
母親の変化が、この後「じわり」と聞いてくるものだとは言え、この一発が決定打になっているのは間違いないのだからこそ、ここではその変化を決定付ける暗喩があったほうが分かりやすかった。
さらに、すでに二回見せてしまっているダンスをもう一回見せるというのは、ただの冗長だ。別のダンスを入れるか、それとも前二回を別のダンスにするか、あるいはダンスをなるべく見せないでおく (特に、一回倒れこんでから起き上がるシーンなんて、見せておかないほうが良
しかも、最後のダンスは撮影も編集も非常に上手い。
どうやって撮ったんだか知らないが (まさかとは思うがマルチカムで一発撮りしたのか?それくらいの迫力はあったが)、すばらしい映像だ。
それだけに、このシーンを映画全体の中で生かしきれない組み立てがもったいない。
役者も演出もカメラも、さして悪いものではない。
それだけに、「もっとしっかり脚本にお金 (時間) をかけましょう」という気持ちになる、世界にあまた存在する「もったいない」映画の一本であったと思う。
ところで、ここんところトヨエツは単なる二枚目を捨ててきていて、良いね。