マイアミ・バイス
監督:マイケル・マン
出演:コリン・ファレル/ジェイミー・フォックス/コン・リー
2006年/米/132分//☆☆☆
批評 制作者の迷いが見える
20年ほど前の、TV ドラマをオリジナルとする、マイアミ警察潜入捜査官の物語。
オリジナルのファンに向けて作った?オリジナルを知らない人間に向けて作った?どっちにせよ中途半端な仕上がりだ。
まずオリジナルを知っている人間としては、この中途半端な終わり方もまたたまらない面白さだが、それ故に映画単体としてみると中途半端。
FBI 内部に、マフィアとの内通者がいるというエピソードは解決しないし、麻薬密売者の“上”はのうのうと逃げ延びている。
当面の事件は解決したが、それはまったく本質的な解決になっていない。
この乾いた結末と、中途半端すぎる絞めは、オリジナルを踏襲したものだが、映画単体としては、伏線回収に失敗した映画にしか見えない。
この視点で見ると、まるでオリジナルファンに向けて作られた作品のように思える。
しかし、オリジナルファンの視点からすると、やっぱりおかしなところがある。
登場人物の名前は、TV のオリジナルシリーズから引き継いでいるが、実質、引き継いでいるのは名前のみ。
特に、主役の一人であるソニーは、その二枚目っぷりをどこかに打ち捨て、ワイルド系に変更。
さらに、マイアミの明るい昼間と、その暗部を露にする夜の描写。このコントラストがたまらなかったのだが、映画ではマイアミは、夜の姿しか見せない。
映画単体としてみれば、これらはさしたる問題ではない。
明暗のコントラストを見せないのも、オリジナルを知らなければ、硬質な潜入捜査官物として十分な仕上がりだからだ。
だがしかし、オリジナルを知るものとしては役不足な部分だと言える。
あれから何年たった?
いまさら「マイアミ・バイス」か?
オリジナルのファン以外にもアピールしないと。
けどオリジナルのファンを無視するわけには。
あーもーどーすんだ!!!
という製作側の迷いが、画の向こうに透けて見える仕上がりであったと言えよう。