チーム・バチスタの栄光
監督:中村義洋
出演:竹内結子/阿部寛/吉川晃司
2008年/日/120分/☆☆☆☆
批評 思いの外面白い
バチスタ手術の最中に発生した連続死亡事故。
いや、それは事故なのか、それとも殺人事件なのか。
調査は、一人の女医と、型破りな役人に任された。
原作にあった、医療制度批判や大学病院内の権力闘争を大きく削った上で再構築した脚本は、なかなか整理されていて分かりやすい。
コメディ色を強くしたのも、登場人物以外からも物語に入りやすくなっている要因になっていると思う。
無論、作品に馴染みやすくなっているという意味でも、良い判断であったのではなかろうか。
だが、この映画を面白くしているのは、なんといっても手術シーンの迫力だ。
どういう手順で、どういう立場の人間が、どういう風に動くのかを最初に説明した上で、数回に渡る手術シーンの緊迫感を生み出すことに成功している。
また最後、犯人宛の部分を大幅に変更したことで、序盤で描かれなかった登場人物の腕前についての説明をすませてみせるのもさすがだ。
必要ないといえば必要のないシーンではあるが、登場人物の、人間的な厚みは増している。
改変してはいけない部分、力を入れねばならない部分を性格に見抜いた制作陣営はさすがだ。
病院内での権力闘争がなりを潜めたため、物語外郭の人物が薄っぺらになっていたり、特に主役 (たぶん) の田口先生がただの天然呆けになっていたりと、原作を読んでいる人間としては物足りなくなっている部分は確かにあるし、ほぼ完全に映画独自の展開だった犯人逮捕のシークエンスが分かり難く感じるが、全体としてはなかなかに楽しめる出来だったと思う。