ワルキューレ
監督:ブライアン・シンガー
出演:トム・クルーズ/ケネス・ブラナー/ビル・ナイ
2008年/米・独/120分/戸田奈津子/☆☆☆
批評 結果じゃねぇよ経過だよ
緊急事態対応作戦だった「オペレーション・ワルキューレ」を反乱計画に組み込み、ヒトラー暗殺後の政治的空白をついてベルリンを制圧。ナチス独裁体制を崩壊させる。
ヒトラー暗殺に始まるこの反乱計画を、史実のままに映画化。
歴史的事実を元にした映画の欠点は、その結末が観客に分かってしまっているという事だ。
あまり知られていない事件ならともかく、有名な事件であればなおのことだ。
多くの人が、「オペレーション・ワルキューレ」を知らずとも、アドルフ・ヒトラーが終戦間際に自殺したことは知っているだろう。
この映画は、その意味で、ロン・ハワード「アポロ13」と同じ間違いを犯した映画だと思う。
結果が分かっているのに、“ヒトラー暗殺の正否不明”という部分で物語を引っ張って行ってしまっているからだ。
結末の悲劇が分かっている以上、成功の可能性があった作戦が、いくつかの不足の事態と人間の判断ミス、そして優柔不断さによって潰れて行く行程こそ、物語の原動力にするべき場所だろう。
わかりきった結末であっても、過程を丁寧に描けば十分におもしろくなる。
多くのことがこの映画を立証している。
この映画は、その教えを活かせなかった。