はやぶさ / HAYABUSA
監督:堤幸彦
出演:竹内結子/西田敏行/高嶋政宏
2011年/日/140分/☆☆☆☆
批評 あとちょっとが・・・
2010年に、無事に地球に帰還した工学実験探査機「はやぶさ」の、打ち上げ直前から帰還までをほぼ時系列で画いた作品。
冒頭、いきなりウーメラでのカプセル回収から入る大胆な構成で「おっ!」と思っていると、カットバックが構造的に活かされていないという肩すかしを最後に食らう。
主人公の成長物語を背景にしているのだから、最初の、人のいない講演会と、最後の人のいる講演会をループにするとか、いくらでも活かす方法は思いつくのに、なぜこんな事になってしまったのだろうか?
無駄なテクニックは、使わん方が良いと思うのだが。
また、カットバックを使うことで事象の整理が成されるはずなのに、時間軸にややこだわりすぎたか、描写する9年間で画きたいことを削りきれなかったのか、登場人物が多く、盛り込みすぎるくらいのエピソードを画くことに懸命になりすぎた感もある。
これにより、物語のピークである、主人公の成長が完全に、「はやぶさ」の物語に隠れているのも構造上、大きな弱点と言えるだろう。
プロジェクトに後発で加わるメンバーを新規追加し、その視線を使うことで、可能な限り「はやぶさ」を知らない人に向けて分かりやすくしようという努力はしているが、上記の通り、盛り込み過ぎなくらいのエピソードがあるので、どの程度それが成功しているのかは、やや不安を感じる所だ。
用語説明をスーパーで突破するとか、かなり (はっきり言って出し方がかっこわるいと思うが) 努力しているのは分かるんだけどね。
厳しめの評価ではあるが、全体ではよくできていると思う。
それ故に、細かく「ん??」となる所が散見されているのが、とてもとてももったいないと感じた。
「はやぶさ」はこの後、松竹と東映も映画化するという。
一発目が、日本資本で作成されていないことに、「邦画なにやってんだ・・・」という思いもあるし、一発目でこの完成度だと、松竹と東映はかなり難しい戦いを繰り広げる事になるぞ。