とある飛空士への追憶
監督:宍戸淳
出演:神木隆之介/竹富聖花/小野大輔
2011年/日/99分/☆☆
批評 天使とダンスしてなっ!<アレ?
やりたい事は分かる。
深窓の令嬢と、凄腕飛空士による、ひと夏の恋物語。
空中戦版ローマの休日とでも言おうか。
脚本構造上最大の欠点は、無口な深窓の令嬢であったヒロインが変化してゆく過程が描かれていないことだろう。
「屋敷の窓から海を見ていてあこがれていた」という台詞があるのだから、その上を飛んだときに彼女が受ける感動を描写しておくべきだったのではなかろうか。
なぜか、コックピットから見える美しい風景ではなく、“きれいな海”ばかりが描写されるのはなぜだろう?
この、美しいシーンの対比として、敵の“戦艦”と呼ばれる巨大飛行機械 (ラピュタのゴリアテをさらに巨大化したような機体) を撃沈シーン (ここでの敵戦術は馬鹿すぎて失笑できるのだが) につなげれば、美しい描写での戦争=殺人という好意の対比が生まれ、またヒロインの受ける精神的なショックと、その結果、彼女にどんな変化がもたらされるのかを描写できはずなのだが、この作品ではそれをしない。
戦艦撃沈シーンでショックを受けるシーンはあるが、それ以上の、連続した描写がない。
結果的に、被弾し着水した後、髪を切ったらいきなり性格が豹変しているように見える。(ついでにいうとこのシーン、主人公は、髪を切ったヒロインに驚いているが、下着姿で走っている事にも驚いたほうが良い)
この描写の甘さが、結局は致命打になっていると思う。
ヒロインの成長は画かれず、空中戦の描写は突っ込みどころが多い。
原作者も、興味無かったんだろうなぁと思わせる世界設定等々。
なんだかなぁ。