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デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-
監督:リー・タマホリ
出演:ドミニク・クーパー/リュディヴィーヌ・サニエ/ラード・ラウィ
2011年/白/109分/林完治/☆☆☆

批評 もっと面白くなりそうなのが残念

 サダム・フセインの次男、ウダイに「似ている」という理由で、強制的に影武者にさせられた男の物語。

 ウダイは完全にイカれた人間として描写される。
 普段は笑顔だが、ひとたびキレると暴力を振い、殺すことも躊躇わない。
 好みの女性を見れば、結婚式の花嫁だろうと歩いている少女だろうと、お構いなしに誘拐してレイプする。

 サダム・フセインが優れた人格者に見えるその傍若無人ぷりは凄まじい。
 恐ろしい事に、原作は、この影武者に強制指名された本人によって書かれ、脚本にも協力している = 内容は基本的に事実だという点にある。(主観によっているが)

 さらに、役者が上手い。
 ウダイと影武者、ラティフは同じ役者が演じているが、観客は、この二人がまったく同じ格好をしているシーンでさえ、間違えることはないだろう。
 身のこなしや話し方、表情の作り方がまったく違う。
 これは凄い。

 とはいえ、正直脚本は弱いと思う。
 登場人物の「恐ろしくよく似た二人」の対比が上手く行っているとは言い難い。
 ウダイは、父サダムに「生まれたときに殺しておくべきだった」と言われるほどに冷え込んだ親子関係になっている。
 それに対しラティフは、父親に「俺が先が短いんだから殺されてもかまわん、けどお前は生き延びろ」と言われる関係だ。

 こうした、家庭環境の違いによる対比や、戦場での士気を上げるために、影武者として危険きわまる最前線に赴くラティフと、後方でヤクやって酒のんで暴力におぼれる狂気を比較しておけば、登場人物に人間的な厚みが増し、さらに面白くなったのではないだろうか。

 綺麗にまとまってはいるが、まとまり方が小さく、「もっと上あるだろう?」と、ついつい思ってしまう映画であった。

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