happy-しあわせを探すあなたへ
監督:ロコ・ベリッチ
出演:-
2012年/米/76分//☆
批評 自己啓発ぅ!?
「幸福を感じる要素は三つある。50%が遺伝的要因、10%が経済や社会的成功といった要因、40%は心の持ちよう。故に、心の持ちようを変えよう」という内容の映画。
幸福を感じる要因の50%が遺伝子にある、というのは、はたして事実なのか?という疑問はあるが、これが正しいと仮定し、この映画を見ることにしよう。
少なくともこの映画はそれを事実だと認定しているからな。
遺伝的要因の支配率が高いとして、その遺伝的要因はどのようなものなのだろうか。
民族的、国家的 (日本のような混血民族の場合、日本国内でもある程度平均化されるはずだし、たとえば朝鮮半島のように、民族的には同一だが分断が発生したことによって遺伝交配がほぼ行われない場合、どのような変化が現れるのかを検討 / 考察する必要がある) 偏差がどの程度なのか。父方と母方の優勢 / 非優勢の要因は?
なにせ幸福度を感じる要因の半分なのだ。
そこに、まず徹底した検証が行われるべきではなかろうか。
しかしこの映画では、そこで終わりだ。
「どうしようもない部分なので」という理由で。
また、10%をしめる、社会的、経済的成功は、この映画では否定的だ。
「社会的成功や経済的成功は、幸福度に与える影響が少ない」というのは分かる「社会的成功や経済的成功は、残る40%とは関係ない」のも、分からんでもない。
が、この映画では否定的でさえある。
この映画ではこのように、絶対的支配率を誇る遺伝的要素50%と、底上げする経済的、社会的成功の10%をカットした上で、幸福な国はブータン、日本なら沖縄、という話が出てくる。
彼らはどういう考えで、幸せを感じるのか?
という話が出てくるが、ここであえて聞きたい。
確かに経済的、社会的には、彼らはこの映画における「不幸」の代表例“東京で生活するサラリーマン”より遥かに劣っているだろう。
その上で「けど彼らは気持ちの持ちようで幸福を感じているのです」という論調だ。
先に指摘した遺伝的特性は一切考慮されない。
たとえば東京と沖縄の幸福度を調べるなら、まず遺伝学的に幸福度を感じる要因を調べねばならないだろう。
同じ程度の気持ちでいた場合、沖縄遺伝的要因が東京よりも全体割合で10%以上高ければ、絶対に沖縄のほうが幸福度を感じることになる。
「幸福度を上げる上で、もっとも重要なのは心の持ちよう」というのは分かる。
納得するし同意もしよう。
だか、心の持ちようを帰るために、エコだロハスだ自然回帰だという部分をやたらと持ち上げる理由がさっぱり分からないし、「最大要因はどうしようもない遺伝的特性」と言っているにもかかわらず、その遺伝的特性を無視して幸福度の高い場所と低い場所を比較する意味も分からない。
今ある生活の中で、幸せを見つけましょう。
仕事のしすぎじゃないですか?
もっと趣味を持ちましょう。
友達を大切にしましょう。
日常の中にある幸せに、気がつきましょう。
という内容になるのが自然なんじゃないのか?
少なくとも最初はそういう方向なのに、どんどん曲がってゆくのはなぜだ?
自己啓発本的胡散臭さや、都会の人が、田舎暮らしにあこがれる気味の悪さ、思想的誘導を感じざるをえん。
試写会終了後、帰宅。
試写会のために LIVE 視聴を断念した SUPERGT 2012 Rd1 岡山の録画を見た。
社会的成功にも経済的成功にも程遠い私だが(特に悔やんでいないが)、この映画を見るよりも、よほど「happy」になったのは皮肉だといえよう。