おおかみこどもの雨と雪
監督:細田守
出演:宮崎あおい/大沢たかお/黒木華
2012年/日/117分/☆☆☆
批評 今はいつ?そこはどこ?
おおかみおとこと恋に落ち、子供を生み、しかしおおかみ男は死に、一人で子を育てねばならなくなった母の物語。
ここで描かれる、ある種の「理想の母親」像についての考察はさておこう。
ジェンダー論は私の得意とする所ではない。
映画全体を通してみた場合、大きな欠点たりているのは唯一、作品における「今」の不在だ。
作品は、人間女性とおおかみ男の間に生まれた二人の子供のうち、先に生まれた女の子のナレーションで進む。
全編を、彼女による過去完了系のナレーションが貫いている。
が、最後まで見ても、このナレーションが「いつ」「どこで」「どのような」といった状況のものなのかがわからない。
作品の時間列は、長女が通学のために家を出た所で終わってしまっているので、では彼女は、いつどうやって母からこの話を聞いたのかもわからない。
これが、娘が「母になる」あるいは「妻になる」というエピローグで閉じれば、物語が和になってもっと良かっただろうなぁと思うのだが。
いろいろともったいない。
ところで、ジブリ作品もだけど、農村地帯で「すごい自然」とか言うのって都会の人間の発想だよねぇ。
あの緑は人の手が入ることによって初めて生み出されるものだ。
クライマックスで描かれる山も「自然にまかされている山じゃないなぁ」と思ってしまって、若干醒めるな。