プラチナデータ
監督:大友啓史
出演:二宮和也/豊川悦司/鈴木保奈美
2012年/日/134分/☆
批評 やらかしとる
重大なネタばれ有
突っ込みどころが多すぎる。
が、致命的なのは作中の基幹となる技術が考慮不足極まりないという点だ。
DNA を元に、その人間の性格さえ的中できるという。
最初から最後まで見ても、その事が事実として描かれない。
作中では、多重人格者を用いてその疑問を提示しているが、回答は出てこない。
これ「解る」という決定的な状況を作り出さないと、欠陥システムを完璧なシステムだと言い張る馬鹿どもの話になってしまうのだが、そこを考えた形跡はない。
最後の台詞は、もしかすると「解る」と提示したつもりかもしれないが、それ性格じゃなくて、逃避行動を示しているだけじゃね?というツッコミだけを残して終わる。
わざわざ多重人格などという、生活している上でまず出会うことのない存在を使わずとも、一卵性双生児を登場させて、“一卵性双生児は、同じ性格で育つ”ことだけ提示すればそれで終わることなのだが。
さらに、この基幹設定が正しいのであれば、キチガイ (言ってることはナチスそのもの) のように描かれた研究者だが、このシステムが完璧で、その背景にある理論が正しいなら、その思想に行き着かざるを得ないだろう。
なにせ DNA によって「性格」や「年齢」が解るのだ。
DNA を元にして犯罪因子を持った人間を排除すれば良い、と考えるのはごく普通の事だ。
DNA 情報だけ持っていれば、人体など必要ないと考えるのも必然だろう。
つか、DNA 操作でエリート作れば問題解決じゃないのか?
必然的に、作品のキャッチコピーに対しても言わざるをえない。
「その“愛”も DNA の決め事だ」と。
さらに、「真のプラチナデータ」とやらも、ではなぜ開発者の遺伝子情報が検索に引っかかったの?という謎は放置される。
政治家や官僚を排除するといっても、検索で少なくとも三等親まではひっかかっているシーンがあるので、ものすごい人数が外れそうだなぁとも思う。
ついでに、DNA で全てがわかるなら、政治家や官僚に適正因子を持ち、かつ犯罪因子のない人間を探せば良いんじゃなかろうか。
それを描くと待ったく別の作品になるがな。
SF 的ガジェットを、使い慣れない人間が扱うといったい何が起きるかを、見事に証明して見せた、という意味で、(今年でいうならば)「ルーパー」に続く「やっちゃった映画」といえよう。
もっとも、原作 (未読) がやらかしている可能性を否定しきれないが・・・