ゼロ・ダーク・サーティ
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェシカ・チャステイン/ジェイソン・クラーク/ジョエル・エドガートン
2012年/米/158分/佐藤恵子/☆☆
批評 プロパガンダってなぁそういうもんだってことなのかぁ?
911 発生二年後から、ウサーマ・ビン・ラーディン暗殺までを、CIA の新米分析官 (作品冒頭) の目を通して描いた作品。
原田眞人「突入せよ あさま山荘事件」という映画があった。
日本最大の人質事件、あさま山荘を事件を、警察庁経由で、警視庁の人間として現場指揮を担当した佐々淳行の視点で描かれた作品だ。
警視庁の失敗はコミカルに、長野県警の失敗は許しがたい行いとして描かれた警視庁万歳映画だ。
この作品は、その映画によく似ている。
アメリカはなにやっても正義なのだ。
効率的に情報を引き出すために拷問するのは善行で、拷問しないのは非効率的で悪なのだ。
という、視点が最初から最後まで貫かれている。
しかも、そのことを登場人物の誰もが疑問になど思わない。
また、鍵となるイベントで描くため、時間が突然数年飛ぶ構成。
そのため、拷問を目の当たりにして目を背けていた CIA の女性分析官は、次の時間に飛ぶともう、平然と拷問を受け入れているという変貌を遂げる。
あまり、上手い組み立てとは思えん。
個々の映像は面白いのだが、偏った視点や、そうした飛び飛びの描写に引っかかる作品であった。