プライベート・ライアン(改訂版)
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス
1998年/アメリカ/

物語
 第二次世界大戦における最大規模の上陸作戦、ノルマンディー上陸作戦のかげで行われた、一人の、二等兵の救出作戦。
 上陸後の混乱の中でライアン二等兵を捜し出し、アメリカに連れて帰ることが与えられた任務。
 わずかな手がかりを元に、最前線での捜索活動を続ける特務小隊はやがて、自分が戦う理由と直面させられる。一人の二等兵を救出するために、自分の命を危険にさらすことに疑問を覚える兵士。
 ライアン二等兵を発見した彼らはしかし、ライアンの望みにより守備隊と合流、町の守備にあたった。それは生存確率の低い戦いへ身を投じることに他ならなかった。


批評
 アカデミー賞の受賞でも有名になったプライベートライアンですが、一部(日本の批評家と称する宣伝屋を含む)で言われていたほどこの映画はリアルではありません(断定)。なぜなら作戦に問題ありすぎるもの。特に最後の守備戦なんてめちゃくちゃ。ドイツ軍も結構馬鹿だけど、連合軍守備隊馬鹿すぎ。
 守備隊が、後発のレンジャー部隊隊長に指揮権を委譲するのはまぁ階級マジックなのかもしれないが、たたき上げのレンジャー部隊大尉はなんでこんな愚か者なの?
 途中で部下が死んでいって云々言ってるけど、この戦い方だと「お前の部下が死んだのはお前がボケナスだったからじゃぁ!!」とかおもっちゃう。

 話題になった先頭のノルマンディー上陸戦も不満ダラダラ。地雷処理班は呼ばれているけど作業している形跡ないし、そもそも呼んでから突入するまでのタイミング考えて、作業してた暇あったとは思えないし、なにより呼んでるとその後ろで浜に向かって全力疾走する自軍兵士が見えるし。
 上陸艇のハッチあいた瞬間頭ぶち抜かれる兵士がいるけど、弾丸の飛来方向がほぼ水平。しかし、敵陣はガケの上。どうやって水平に弾、撃ってんのよ?
 強襲揚陸邸の防護がしてあるけど、どう見ても役に立ってない。史実だとかなりの被害が出ているハズなんだけどね。
 そして味方の砲撃でやられる連合軍兵士がやたらと少ない!!
 あの作戦の被害の半分は同士討ちだったという論文があったと記憶しています。つーか古今東西、戦争における最大の被害は同士討ちなんつーのは常識です。湾岸戦争でガシガシ国連軍同士が打ち合っていたのもただの事実です。

 そうした事実との差違は、まぁ映画だからと笑って許(せないんだけど)したとしても、実にこのシーンは気に入らない。特殊効果で無理矢理悲惨さを見せつけてるように見えるぞ。いままで死ぬほど見せられた演出に、ただ特殊効果重ねて残虐シーンにしただけじゃないか。それならスタンリー・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」のように、人間を描くことで戦場の恐怖を描きなさいといいたい。
 「フルメタル・ジャケット」前半のキレるデブとか、後半の機関銃を乱射するベトナムの少女とか、技術的ではなく、演出的にメチャメチャな恐怖を感じましたよ、私は。ま、スピルバーグにキューブリックほどの映像が作れるとはおもえんけどな。
 技術偏重で作られた映像は、時間さえ掛ければなんでも出来る現代映像世界において、すでになんでもないものになりつつあると思うんだけどね。そもそもメッセージは技術じゃなくて、脚本と演出で伝えるべきものじゃないのか?

 最後(と最初)の墓地のシーンは見事!!こういう絵はうまいねスピルバーグ。
 「シンドラーのリスト」でも、こういうシーンはうまい!!と思った。

 矛盾しているようですが、それでも全体的には非情に良くできてる作品だと思いますけどね。


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