身代金
監督:ロン・ハワード
出演:メル・ギブソン/レネ・ルッソ/ゲイリー・シニーズ/ブラウリー・ノルティ/デルロイ・リンドー
1998年(1997/2/15)/米国/分//☆☆
批評 ロン・ハワード的詰めの甘さ・参
成り金男の息子が誘拐された。
社内の派閥闘争がらみの事件か?怨恨か?不明なまま、事件は進む。犯人からの身代金要求。姿の見えない犯人に業を煮やした男は、ついに最後の賭けに出る。
この物語最大の欠点はどこにあるのか?
相変わらずのロン・ハワード節。平坦でアホか!?と思わざるを得ない演出か?やたらと張られた複線が、じつはダミーばかりでテンポが悪い脚本か?
ちがう、物語の根幹に実は最大級のミスがある。
最初に大騒ぎしている事件の動機に付いて、結局それがなんなんだかさっぱり分からないという点だ。
誘拐事件をテーマにしながら、その誘拐事件が“ただの誘拐事件”である以上の意味を持たなかったのだ。その割に父親は成り金で、全米でもなのしれた有名人。そういう設定にする意味はどこにある?否、犯人はなんでそんなに難易度の高そうな人間をターゲットに選んだ!?
これに拍車をかけるのが平坦な演出だ。
あいかわらず物語の見せ場で、だぁらだぁらヒルムを回してかったるい編集で横につなげる。結果、当然のように散漫でなにが撮りたんだか分からない駄作が出来る。
脚本もいただけない。
社中の敵の存在や、男の働いている不正についての描写。これらが物語の本筋にまったく関係ない。それも、話が出てきたらすぐに「関係ないんだよぉ〜ん」で終わってしまう。引っ張って観客に“ひょっとしたら”と思わせることもない。
たしかにフェイントをかけることも必要だが、これではただ物語りのテンポが悪くなるだけだ。
子供を誘拐し、身代金を奪う。それなら黒澤明「天国と地獄」の方が数千倍面白いとだけ伝えて置こう。